今の心境

某女子大の就活生と事を終え、
俺はいま終電に揺られている。



たったの10日で、世界はこうも違って見えるのかと
戸惑いを隠せないでいる。





今日は昼間に6月以前に内定をもらっていた某企業の座談会があった。
やっぱり相当な覚悟を決めて入社しなければ、
生き残っていけなさそうな雰囲気だ。

自分にそんなことが務まるのだろうか


そう戸惑いながら社員の話を聞いているとき、
俺の左ポケットに確かな振動を感じた。

この継続的なバイブレーションは着信電話だ。

社員が席を外したときにそっと確認すると、
画面には○○人事部と書いていた。
6月初旬の最終選考以来、音沙汰無しだった第一志望郡の企業だ。

俺の鼓動は一気に高鳴った。

そこからは座談会の内容は全く頭に入らない。

とにかく早く折り返しの電話をしたかった。



座談会終了後、誰よりも早く部屋を抜け出て、
梅田の地下ですぐに電話をかけた。
担当者が不在のため、折り返し電話をいれるとのこと。

待ち遠しくて仕方がない。
親父から電話がかかってきたので、事情を話した。
親父も失礼の無いように対応しろと、アドバイスをくれた。


就活がある程度の成功という形で終えるイメージを持ちながら、すぐに女とのアポを入れた。


スラッとしたスタイルの就活生。
某お嬢様女子大学の学生だ

きょう締め切りのESがあるとのことで、
ネカフェに行くことに。
正直、女のESはどうでもよかった。
俺はずっとスマホを握りしめていた。




そしてついに待ち望んだバイブレーションの再来。
すぐに画面をタップし、応答する。
聞き覚えのある声。

6月以前の面談で、何度も話をしてすっかり親しくなった若手人事の人だった。


G-MONKEYくん、いま時間いけるかな?
先週の最終面接の結果のことなんだけど、、、







遂に俺はあらゆる苦難から解放される
世界が輝いて見えた。









、、、申し訳ないですが、不合格という結果になりました。













視界に広がる鮮やかな色彩は、一瞬でセピアへと変貌をとげた。












6月以前から長いこと付き合ってもらったけど、このような結果になってしまって申し訳ないと。







    





内定はどこか出たのかと聞かれた。













俺はとっさに口からでまかせを吐いてしまった。











メーカー1社から貰っていると。














こんなとこで小さなプライドを武装してしまった。
















でも6月以降の選考に全て落ちているとは言いたくなかった。


強がりたかった。











泣き崩れたかった。







そんな瞬間は6月に入ってから何度もあった。




でも1度もそんなことはしていない。






それは決して心が強いからではない。









内に溜まった哀しみを吐き出す術を知らないだけだった。











彼女とのアポはすでに動き出していたので、とりあえずとの思いで進める。



こんな日に限って、飲んでからノーグダでホテルに行き、
準即を決めた。


何も満たされない即だった。








俺は周りとは違う特別なものを持っていると思い続けていた。


傲慢に聞こえるかもしれないが、それは
自己評価も他己評価も得ていた。


俺の将来は無限の可能性を秘めていると。



でも実はそうではない。



可能性というのはいついかなるときも有限である。



だからこそ、目測を誤らずに、己の持つ可能性を正しく活用しなければならない。




サッカー選手、アーティスト、経営者


この世にはいわゆる夢を叶えた成功者たちと言われるポジションがいくつかある。


だが彼らは決して無限という曖昧な線引きで定義された可能性に賭けたギャンブラーではないだろう。


はっきりとした枠組みのある、限られた可能性を最大限ひきだしたプロフェッショナルたちだ。





可能性はいつだって限定された範囲にしかない。




その範囲は年月とともに変化するのかもしれないが、
飛躍的に広がるというようなことはないだろう。






俺はそれを無限という曖昧な言葉で、闇雲に未来を模索していただけだった。



そこに待っていたのは、社会不適合者という烙印だけであった。




いま、試されているだろう。


俺にはどんな可能性があるのか。



今こそ限られた可能性を引き出さなければならない。







自分には何ができるのか、どのような枠組みで可能性が並べられているのか、










さあ、ゼロから仕切り直しだ。